令和7年度事業方針

1.農業・農政及び組織をめぐる情勢と課題

 我が国の農業・農村では、農業者の減少・高齢化が著しく進行している。一方、世界人口の急増に伴う食料需要の増加に加え、気候変動による異常気象の頻発化や世界各地における地政学的リスクの高まりなどにより、生産及び供給の安定性が揺らいでいる。このような状況を受け、令和6年6月には、食料の安定供給確保や食料安全保障の強化を基軸とする食料・農業・農村基本法が四半世紀ぶりに改正された。
 また、国内の基幹的農業従事者が現在の116万人から、今後20年で約4分の1の30万人程度にまで減少する見通しとされている。このような中、現在約430万㏊に及ぶ農地を維持し、国民への食料供給を担っていく必要がある。そのため、国は「食料・農業・農村基本計画」に基づき、農地面積や品目ごとの担い手目標を設定するとともに、今後5年間を「農業構造転換集中対策期間」と位置づけ、水田政策や直接支払制度の見直しなど、基本計画の目標の実現に向けた施策や事業を展開することとした。
 一方、県では、令和3年に策定した農業振興計画「とちぎ農業未来創生プラン」に基づき、令和5年に改正された農業経営基盤強化促進法により法定化された「地域計画」と連動し、地域農業を持続的に支える仕組みづくりである「とちぎ広域営農システム」に取り組んでいる。
 こうした中、地域計画の策定において中枢的な役割を担う農業委員会は、今後、計画の実現に向けて、農地利用の集積・集約、遊休農地発生防止解消、地域外の担い手や新規就農者等を受け入れる条件整備の推進、さらには農地中間管理事業法に基づく農用地利用集積等促進計画の活用による計画原案の作成や要請の対応などの取組が求められている。
 また、計画の進捗状況を的確に把握するとともに、所有者不明農地への対応や貸し手と借り手間の権利設定を適切に行い、担い手に結びつける効果的な活動も推進する必要がある。
 さらに、規模拡大を目指す担い手や新規参入者、多様な担い手の経営発展を支援するため、経営管理(複式農業簿記等)の取り組みを進めるとともに、法人経営を志向する農家への支援にも注力する。また、農業人材の確保の観点から、外国人雇用を検討する農家に対し、技能実習生やと外国人労働者の受け入れに向けた新たな育成・就労制度の活用を、全国農業会議所と連携し推進する。
 農業委員会系統組織としては、農業の持続的な発展と農地の維持・確保に努めることを目標に掲げ、農業委員や農地利用最適化推進委員の資質向上図る。同時に、農業委員会が行う農業者や農村地域の声を農政に反映させる活動を積極的に推進し、農業者や関係機関・団体の期待に応えるため、農業会議の事務局体制の強化を図り、これらを実現するため、以下の事業に取り組む。

2.事業推進の重点方針

1)食料・農業・農村基本計画の推進に向けた農業委員会活動の体制強化

 令和6年度に作成される「食料・農業・農村基本計画」の推進を図るため、農業委員会活動の体制強化を図る。特に、4月から施行される改正「農振法」、「農地法」等の周知を徹底し、農業委員会が、農地の総量確保と適正利用に向けた活動が円滑に行われるよう支援する。具体的には、農地制度の仕組みや農地利用の最適化を推進する活動の情報提供、農業委員・農地最適化推進委員及び農業委員会職員等を対象とした研修会の開催、並びに農業委員会が主催する研修会等への支援を実施する。

2)地域計画の実現と農地利用の最適化に向けた取り組み

 令和6年度に市町が作成した「地域計画」を基に、農地利用の最適化を進める。そのため、農地の権利設定や農業委員会が作成した「目標地図」を地域の実情に応じて更新できるよう、計画の目標達成に向けた効果的な各種施策の情報提供を行う。
 さらに、既存の担い手を中心に、農地の集積・集約化を進めるとともに、多様な担い手や新規就農希望者が農地を利用しやすい環境整備を図るため、市町農政部局・県等関係機関と連携して地域計画の実現に向けた取り組みに必要な研修等を開催する。
 また、新規就農者の確保・育成等の取り組みを強化するほか、遊休農地の発生防止・解消活動、「農地パトロール」と遊休農地意向調査の実施、並びに所有者不明農地等の権利設定の取り組みを支援する。

3)農業者・地域の声をくみ上げた政策提案活動の推進

 農業委員会ネットワーク業務の実施を通じて得られた知見に基づき、農業委員会が農地利用の最適化の推進に関する事務をより効率的かつ効果的に実施するため、関係行政機関等に対し、農地等利用最適化推進施策の改善について意見を提出する。また、農業会議構成団体組織である農業経営者組織、農業法人、認定農業者等の意見や要望をくみ上げ、農業・農業者の代表機関として、農政活動を推進する。

4)農業経営の確立と新規就農・人材育成等の支援強化

 認定農業者等の経営管理を推進するため農業簿記記帳や青色申告の普及・啓発、農業経営の法人化等の推進、家族経営協定の普及・啓発、農業者年金の加入推進、担い手の確保・育成等の活動を支援する。また、新規就農・人材育成については、各種研修、就農支援等を通して、農業への就業を促進し将来の担い手として自立できるよう支援する。

5)農業・農業者等に関する情報提供活動の取り組み

 農地利用最適化の推進、農業施策の普及・浸透等を図るため、全国農業新聞・全国農業図書の普及・活用の推進と、農業委員会だよりや市町広報誌等を通して情報提供を推進する。