令和3年度事業方針

1.農業・農政及び組織をめぐる情勢と課題

 我が国の農業・農村の現場は、農業就業者の高齢化や担い手不足、農地の荒廃、国際化の進行による競争の激化など、極めて厳しい状況にあり、農業生産額が減少するとともに、基幹的農業従事者の減少や高齢化の進展や耕作放棄地の増加等が顕著になる中で、農業構造の改革、新規参入の促進が喫緊の課題となっている。

 政府が昨年3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」では、上記のような情勢も踏まえて食料自給率45%を目標に掲げ、生産の増大と加工・業務用対応の強化、国産品の輸入品との代替、輸出拡大等に向けた新市場の創設、農業生産基盤の強化を改めて農政の根幹に据え、その実現を目指すこととしている。

 こうした中、令和2年に世界中に猛威を振るった新型コロナウィルスに対し、政府は感染拡大防止と経済活動の両立を目指して各種対策を講じているが、令和3年に入っても終息の兆しが見通せないでいる。このコロナウィルス禍により、農産物輸出国における輸出規制の発動等によって、改めて国内生産の重要性が認知されるとともに、都市地域における過密による感染を回避するため、地方回帰の動きが強まるなど農業・農村に対する再認識が高まっている。

 一方、昨年1月に日米貿易協定が発効、同年11月には「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」の交渉が合意した。さらには本年1月には「日英包括的連携協定(EPA)」が発効した。また、韓国と中国がTPPへの加盟の検討を表明するなど農産物貿易を巡る動向は予断を許さない状況となっている。

 政府は、国内の農業生産体制の強化に万全を期するため、昨年12月に「総合的なTPP等関連政策大網」を改訂するとともに、「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改訂し、2030年農林水産物・食品の輸出額5兆円の新たな戦略目標を設定して令和2年度農林水産関係第3次補正予算において、約3,200億円を計上する等の対策を講じている。

 平成28年4月に施行された改正農業委員会法により、農地利用最適化義務が新たに法令業務に位置付けられてから5年を経過する中で、これまで活動の点検・検証を行うとともに、農地利用の意向把握と地域の話し合い活動を基本とする農業委員会の農地利用最適化の取り組み強化を図る必要がある。改正法施行後5年の検証等を踏まえ、農業委員と農地利用最適化推進委員の役割の明確化と資質向上及び現場での一層の連携の取り組みを支援するとともに、農業委員会には農業者や農村地域の声を農政にしっかり反映させることが求められていることから、今後とも農業者のみならず関係機関・団体の期待に応えるため、以下の事業に取り組むこととする。

2.事業推進の重点方針

1)新・農業委員会制度の下での組織・活動体制の整備強化

 改正法施行後5年の検証等を踏まえ、市町農業委員会の活動実態の把握・情報の共有化、組織の課題・問題点を把握して必要な対応に努める。

 また、農業委員会活動への的確な助言や相談活動の円滑な推進を図るため、農地制度の仕組みや農地利用の最適化を推進する活動などの情報提供、農業委員・農地利用最適化推進委員及び市町農業委員会職員等を対象とした研修会の開催、市町農業委員会が主催する研修会等を支援する。さらに、農業委員・農地利用最適化推進委員一人一人の活動強化を重点に事業推進を図る。

2)農地利用の最適化に向けた取り組みの推進

 「農地利用最適化推進指針」の策定、「人・農地プランの実質化」を踏まえ、年度計画の作成に当たっては、委員の担当地域の実情を踏まえた目標設定の支援を進めるとともに、農業委員会における農地利用の状況調査(農地パトロール)、利用意向調査の計画的な実施を支援する。その際、委員の日々の活動記録を記帳する活動記録簿による「委員の活動の見える化」を市町農業委員会と農業委員会ネットワーク機構である農業会議、全国農業会議所及び関係機関で情報を共有し、農地所有者への意向調査と人・農地プラン等地域の話し合いへの参加の取り組みを強力に推進する。

3)農業者・地域の声をくみ上げた政策提案活動の推進

 農業委員会ネットワーク業務の実施を通じて得られた知見に基づき、農業委員会が農地等の利用の最適化の推進に関する事務をより効率的かつ効果的に実施するため、関係行政機関等に対し、農地等利用最適化推進施策の改善について意見を提出する。また、農業会議構成団体組織である農業経営者組織、農業法人、認定農業者等の生の声や要望をくみ上げ、農業・農業者の代表機関として、農政活動を推進する。

4)農業経営の確立と新規就農・人材育成等の支援強化

 農業簿記記帳や青色申告の啓発・普及、農業経営の法人化等の推進、家族協定の啓発・普及、農業者年金の加入促進を農業経営者組織の自主的な組織活動と連携しながら継続し、担い手の確保・育成及び経営確立に向けた支援を強化する。

 また、新規就農・人材育成については引き続き「新規就農相談事業」や、「農の雇用事業」等を通して、農業への就業の定着と将来の担い手として自立できるよう支援する。

5)農業・農業者等に関する情報提供活動の強化

 農地利用最適化推進の横展開、農業施策の普及・浸透等を図るため、全国農業新聞・全国農業図書の普及・活用を図るとともに、農業委員会だよりや市町広報誌・ホームページを通して、農業者のみならず幅広く情報の提供に努める。