令和元年度事業方針

1.農業・農政及び組織をめぐる情勢と課題

 我が国の農業・農村の現場は、農業就業者の高齢化や担い手不足、農地の荒廃、国際化の進行による競争の激化など、極めて厳しい状況にあり、農業生産額が減少するとともに、基幹的農業従事者の高齢化の進展や耕作放棄地の増加等が顕著になる中で、農業構造の改革、新規参入の促進が喫緊の課題となっている。

 一方、平成30年12月にはTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)11(イレブン)が発効、EPA(日EU経済連携協定)も平成31年2月に発効され、TAG(日米物品貿易協定)の交渉も開始されるなど、貿易交渉を巡る状況は大きな一歩を踏み出した。

 こうした状況の下、政府・与党は、農業の成長産業化に向けた農業改革の本格化に向け、担い手への農地集積・集約化等の構造改革の抜本的な推進を図るため、農業委員会の協力等を通じた「人・農地プランの実質化」を中心とした改正農地中間管理事業関連法案を通常国会に提出、その成立を目指している。また、「食料・農業・農村基本計画」の見直しに向けた検討が今年の秋から本格化することとなる。

 農業委員会組織については、平成30年10月に全国1,703すべての農業委員会が新体制に移行するとともに、平成31年4月には改正農業委員会法で2回目の選任が行われる。栃木県では、平成30年9月に25市町すべての農業委員会が新体制に移行し、農業委員と農地利用最適化推進委員あわせて979名(平成31年2月6日時点)が選任された。平成31(2019)年度には、栃木市(2019年7月19日に任期満了)が2回目の選任を迎える。

 農業委員会の役割は、従来の農地法に基づく許認可業務に加え、農地中間管理機構を活用した農地の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消による優良農地の確保など「農地等の利用の最適化」を図ることが必須業務となっている。今後、農地法をはじめとする農地制度の公正・公平な運用はもとより、重点化された「農地利用の最適化」の取り組みのさらなる強化とその成果が求められることとなる。

 平成30年11月16日に施行された農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律により、農地利用の最適化をさらに推進するため所有者不明農地の権利設定等が措置されるとともに、現在、通常国会に上程されている改正農地中間管理事業関連法案の中で、農業委員会に期待される「人・農地プラン」等の話し合いの推進や農地の有効利用の推進が期待されるなど、農業委員・農地利用最適化推進委員の活動は高度化、複雑化している。

 さらに、農業委員会には農業者や農村地域の声を農政にしっかり反映させることが求められていることから、今後とも農業者のみならず関係機関・団体の期待に応えるため、以下の事業に取り組む。

 

2.事業推進の重点方針

1)新・農業委員会制度の下での組織・活動体制の整備強化

 すべての農業委員会が新体制への移行を終了したことを踏まえ、農業委員・農地利用最適化推進委員が連携した農地利用最適化に向けた取り組みの強化、「行動する農業委員会」を実現するための事務局を含めた運営体制の整備・強化に万全を期すため、情報の共有化、組織の課題・問題点を把握し必要な対応に努める。

 また、農業委員会活動への的確な助言や相談活動の円滑な推進を図るため、農地制度の仕組みや農地利用の最適化を推進する活動などの情報提供、農業委員・農地利用最適化推進委員及び市町農業委員会職員等を対象とした研修会の開催、市町農業委員会が主催する研修会等を支援する。さらに、農地の利用調整に取り組むため、「人・農地プラン」における集落・地域の話合い活動を推進するため農業委員等の研修を実施する。

2)農地利用の最適化に向けた取り組みの推進

 農業委員会法の必須業務である「農地利用の最適化」の具体的な柱である農業委員会における「農地利用最適化推進指針」の策定・実践のための助言・協力を行う。

 指針に掲げた農地利用の集積・集約化に取り組むため、農家の経営意向の把握と貸し手・借り手の利用調整の取り組みや、遊休農地の発生防止・解消対策として定期的な農地パトロールの実施と遊休農地所有者への利用意向調査等の計画的な実施、耕作放棄地の再生利用活動を支援するとともに、遊休農地や所有者不明農地等を含めて円滑に農地利用の集積ができるよう取り組みを支援する。

 さらに、農業委員会の農地台帳等の整備、農地情報公開システムの運用が適切に行われるよう情報セキュリティ等の遵守等情報提供側の理解促進を図る。

3)農業者・地域の声をくみ上げた政策提案活動の推進

 農業委員会ネットワーク業務の実施を通じて得られた知見に基づき、農業委員会が農地等の利用の最適化の推進に関する事務をより効率的かつ効果的に実施するため、関係行政機関等に対し、農地等利用最適化推進施策の改善について意見を提出する。農業会議構成団体組織である農業経営者組織、農業法人、認定農業者等の生の声や要望をくみ上げ、農業・農業者の代表機関として、農政活動を推進する。

4)農業経営の確立と新規就農・人材育成等の支援強化

 農業経営の確立支援については、これまで蓄積してきたノウハウをもとに、複式簿記記帳、青色申告の普及、集落営農の組織化・法人化の推進、家族経営協定の普及、農業者年金の加入促進を、農業経営者組織の自主的な組織活動と連携しながら継続し、担い手の確保・育成及び経営確立に向けた支援を強化する。

 また、新規就農・人材育成については引き続き「新規就農相談事業」や、「農の雇用事業」等を通して、農業への就業の定着と将来の担い手として自立できるよう支援する。

5)農業・農業者等に関する情報提供活動の強化

 改正農業委員会制度や改正農地法制度の施行を受け、新制度の円滑な周知と農政の動向等を的確に情報提供するために、全国農業新聞・全国農業図書の普及・活用を図るとともに、農業会議のホームページや農業委員会だよりを通して、農業者のみならず幅広く情報の提供に努める。